ばいおりんたちの学校

大阪市中央区谷町のバイオリン教室

いくつかの短いお話 パパの旅行記 vol.1

 パパの旅行記 vol.1

 

(1999年筆)

 

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       いつでも・どこへでも・歩く「パパ」
     そんな「パパ」には、ある計画があった!

11_1 私のパパは歩くのが好き、歩かせるのも好き。私が小さい頃のお話。日曜日の朝はいつもパパにお散歩へ連れて行かれた。それはお散歩なんてかわいいものじゃなくて山登り。「歩くことはとっても体にいいんだぞ」と言って、嫌がる私と妹と犬のブクを連れて行った。ママは「朝ごはんの準備をするから」とついて来なかった(ずるい)。

 山頂についたら、ちょっとだけ休憩して又歩く。山をおりた所に西国三十三ケ所の1つ「中山寺」があって、そこのお茶屋さんでもう1回休憩。パパは何故かいつも「おはぎ」を注文して、私と妹とブクに食べさせてくれた。(どうして「おはぎ」だったのかなぁ) 日曜の朝なのに、お参りに来てる人はいっぱいいた。「中山寺」は「安産」で超有名。毎月戌の日にはお腹の大きな妊婦さんやお宮参りの人がいっぱい来るけど、私がパパと行く日曜日の朝は、おじいさん・おばあさんしかいなかった気がする。

パパは日曜日以外ももちろん歩く。片道1時間以上もある会社へも、毎朝早起きして歩いて行ってた。パパはとっても「会社人間」。 「子育ては人任せ」とママはよく文句言ってたけど、いつも会社・いつもお仕事だった。そんな「会社人間パパ」が名古屋へ単身赴任することになった。すぐ帰ってくると思ってたのに退職するまでずっと名古屋だった。もちろんパパは1 名古屋でも毎日歩いて会社に行った。ある時パパは大阪まで歩いて帰って来た。家に着いた時のパパの足は、目をそむけたくなるほどグチャグチャで、ママがそれを見て貧血で倒れた。パパもかわいそうだったけど、ママもかわいそうだった。

帰ってくる途中、足が痛くていくつも靴を買い替えたらしい。靴屋さんも足を見て驚いて「電車で帰ったほうがいいよ」と言ったけど、頑固なパパは「歩くと決めたら歩く」とやめなかった。家に着いた時グチャグチャの足は腫れ上げって一回り大きくなってた。どうしてそんな事するんだろう?

実はパパにはずっと前から計画していた事があったのだ。「会社を退職したら、お遍路さんを歩いて回る」 その為にずっとパパは歩く練習をしてたらしい。それを聞いて本当にびっくり。おじいちゃんになってから、そんな事できるの? 私はとっても心配になった。

つづく

 

 

 

 

 

(DE創刊準備号マイナス1号掲載 1999年6月1日発行)